ソマリの歴史
ソマリはアビシニアンの長毛種ですが、誕生したのは1950年頃と考えられています。
1940年代に、イギリスのジャネット・ロバートソンというブリーダーが、普通の短毛アビシニアンをオーストラリアやニュージーランド、北アメリカなどに輸出しました。
20世紀初頭には、アビシニアンは世界中の猫血統管理団体に登録されました。
長毛種の猫は、これらの猫の子孫の中から自然発生したと言われています。
1963年に、カナダのブリーダー、メアリー・メイリングが地元のペットショーで、最初の長毛アビシニアンをエントリーします。
そこでたまたまキャットショーの審査員をしていたケン・マックギルが、この猫のことをとても気に入り、メアリーから1匹もらいうけて計画繁殖を始めました。
ソマリとしての最初の公式記録は、このケン・マックギルが育てた猫と言われています。
1978年には、「アビシニアンの長毛種」から、全く別の独立種「ソマリ」として独立しました。
ちなみに「ソマリ」という名前は、アフリカのエチオピア(旧アビシニア)の隣国「ソマリア」から来ています。
しかし、血統とソマリアとは直接関係はありません。
なお、近年の遺伝子解析による研究や繁殖者の経験から、ソマリが長毛になったのは異種交配が原因ではなく、突然変異であったことが分かっています。
ソマリは現在ではカナダ、アメリカ以外にも世界中で猫種として登録さています。
アビシニアン同様、世界中で愛されている猫です。
ソマリの特徴
ソマリは、小さく緩やかなV字型の頭に大きな耳がついていて、アーモンド形の大きな目をしているのが特徴です。
目の色はアビシニアンと同じように、グリーンまたはゴールド(琥珀色)をしています。
長毛とはいえ、基本的にペルシャよりは短い、セミロングの被毛をまとっています。
個体によっては、毛の長さや、長い毛が生える部分に多少の違いがあり、首周りから胸にかけての部分が襟巻きのようにロングヘアで、尻尾がふさふさになるタイプも存在します。
しっぽ長く、体の被毛よりも長めの毛で覆われてふさふさとしている事から、ソマリの愛好家からは「キツネのような猫」と呼ばれています。
毛質はとても柔らかく密生したダブルコートで、コンスタントに抜けるのではなく、一年の内で何度か大量に抜け毛る時期があります。
ソマリの鳴き声は鈴を転がしたような音色といわれる、美しい声をしています。
ソマリの性格
ソマリはアビシニアン同様に、行動的でとても好奇心旺盛な性格をしています。飼い主には忠実で甘えん坊です。
また、賢く洞察力があり好奇心も強いため、人間の行動ををよく観察しています。
犬のような猫といわれるほど、コミュニケーションが取りやすいので、しつけが入りやすい飼いやすい猫と言えるでしょう。
ソマリの寿命
ソマリの平均寿命は12歳前後と言われています。
猫全体の平均寿命の15歳と比べると若干短いでしょう。
純血種と雑種とでは雑種の方が寿命が長めになっているので、純血種ではもう少し短い可能性もあります。
8歳ごろから体の衰えが始まり、睡眠時間が長くなるでしょう。
10歳を過ぎると、1日中あまり動かず寝て過ごすことが多くなるので、寝たきりにならないように適度な運動をするようフォローが必要です。
平均寿命の12歳を過ぎると白内障などがあらわれやすいく、生活に支障をきたすので十分注意してあげましょう。
ソマリの体重
ソマリは小さ目で、筋肉質のフォーリンタイプの猫種です。
標準的な体重は3~5kgとされています。
アビニシアンと比べるとサイズはほとんど同じですが、毛が長いので大きく見えます。
ソマリの値段
ソマリの値段相場はブリーターから直接購入する場合、およそ11万円~20万円です。
価格は毛の色などによって多少変わってくるでしょう。
すこし高めの猫種ですが、ペットショップでもたまに購入することが可能です。
ソマリの飼い方
ソマリは運動量が多く遊ぶことが大好きです。
なので、運動が不足するといたずらをしてしまう事があるため、注意しなければなりません。
アビシニアンとソマリは水を怖がらない猫が多いので、風呂掃除やトイレ掃除の邪魔をしに来ることもあるかもしれません。
特に子猫時代は、危険防止のため浴槽の水量の管理するなど、十分に気を付けてあげましょう。
またご飯については、ソマリは平均的な食事で大丈夫です。
ソマリは人の恩などもしっかり覚えているので、ほめるときはしっかり愛情を伝える、怒るときはしっかりダメだということを教えてあげる事で良い関係が築けるでしょう。
ソマリは協調性や親和性が優れているので、ほかの猫や犬などのペット、人間の子どもとも仲良くしてくれます。
お子さんがいる家庭でも安心して飼うことができます。
優しく繊細な面があるため、神経質な点は人間やほかのペットではなくソマリ自身に向かってしまうので、ストレスを抱えると病気の原因となります。
不安にさせない落ち着いた環境と、たっぷりの運動、コミュニケーションを与える事で健康に長生きできます。
ソマリは長毛ではありますが短めですので、週に2回以上のブラッシングやコーミングをしてあげるだけで大丈夫です。
ソマリのかかりやすい病気
ソマリは元々アビシニアンの中で長毛で生まれた個体を元に作られた猫種なので、遺伝的にアビシニアンに起こりやすい病気はソマリも起こりやすいと言われています。
それらの病気には、
- ピルビン酸キナーゼ欠損症
- 進行性網膜萎縮症
- ビリルビン胆石症
- 腫瘍
- アビシニアン関連疾患
などがあります。
それぞれのソマリのかかりやすい病気について解説していきます。
ピルビン酸キナーゼ欠損症
ソマリのかかりやすい病気の1つ目は「ピルビン酸キナーゼ欠損症」です。
ピルビン酸キナーゼ欠損症は、赤血球上にあるピルピン酸キナーゼと呼ばれる酸素が欠損する事により、十分なエネルギーが生産できなくなる病気です。
これにより赤血球の寿命が縮まり、貧血に陥ってしまいます。
診断には、血液検査や遺伝子検査を通した疾患遺伝子の確認が行われます。
主な症状としては、すぐに座ってしまう、運動したがらない、脈が速い、まれに黄疸、網状赤血球の増加、口腔粘膜の蒼白化などが見られます。
治療法としては、軽症の場合貧血症状があっても軽度なので、激しい運動を行わせないなどの対処となります。
重症の場合は貧血症状も重いので、基本的には軽症時と同じように激しい運動をさせない事が挙げられますが、骨髄移植という方法もあります。
とはいえ、ドナーを見つけられる確率や、手術の危険性を考えると現実的ではありません。
進行性網膜萎縮症
ソマリのかかりやすい病気の2つ目は「進行性網膜萎縮症」です。
進行性網膜萎縮症は、加齢とは無関係に若い頃から目の中の網膜が劣化を始め、最終的には失明に至る病気です。
診断には、眼底検査や視力の電気的な検査などが行われます。
根本的な治療法がないので、飼い主さんも猫も視覚障害と付き合いながら暮らしていく事になります。
ビリルビン胆石症
ソマリのかかりやすい病気の3つ目は「ビリルビン胆石症」です。
ビリルビン胆石症は、ヘモグロビンの代謝物質であるビリルビンが体内で過剰になりすぎて結石を作ってしまう病気です。
診断方法は、超音波検査や血液化学検査などが行われます。
主な症状は元気がない、食欲不振、嘔吐、腹痛、黄疸、胆管肝炎などが現れます。
原因は様々で、胆嚢管の目詰まりや下部組織からの逆流、胆嚢自体の病変、胆汁のドロドロ化が挙げられます。
治療法は、主に病気に軽減を目的とした対処療法として投薬治療が行われます。
ただし、胆嚢が破れて中の胆汁がおなかの中に漏れ出し炎症を起こしている場合は、外科手術を行います。
この場合、お腹を開いて内部を洗浄し、再発を防止する為に胆嚢自体を外科的に切除する場合もあります。
腫瘍
ソマリのかかりやすい病気の4つ目は「腫瘍」です。
腫瘍は、細胞が以上に繁殖してできた塊の事で、他の臓器にまで影響を及ぼす場合は悪性腫瘍(がん)と呼ばれます。
診断方法は、採取した組織サンプルを組織学的に調査して判明します。
主な症状としては、体重減少、食欲不振、リンパ節が腫れる、運動をしたがらない、元気がない、貧血、微熱、しこりなどが現れます。
もし、しこりが見つかった場合、悪性腫瘍かどうかの判断をしなければならないので、早急に動物病院へ連れていきましょう。
猫がガンになる確率は低いと言われていますが、発症すると重症化しやすいので注意が必要です。
原因は様々で、老化や紫外線、放射線、ウイルス、ホルモン、遺伝、化学物質、磁場、受動喫煙、アスベスト、ワクチン接種などが挙げられます。
治療法としては、手術によって悪性腫瘍を取り除いてしまう方法や、化学療法、薬物療法、放射線治療、免疫療法、代替療法などが行われます。
アビシニアン関連疾患
ソマリのかかりやすい病気の5つ目は「アビシニアン関連疾患」です。
アビシニアン関連疾患は病名ではなく、アビシニアンにかかりやすい以下の病気にかかりやすいという事です。
アビシニアンで好発する以下の病気には、特に注意が必要です。
- 細菌性尿路感染
- マイコバクテリア症
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)
- 杆体錐体異形成
- 腎アミロイドーシス
- 重症筋無力症
ソマリはアビシニアンを起源としているので、アビシニアンと同様にいくつかの遺伝的な病気を発症してしまうリスクが高い猫種と言えます。
遺伝病は、その遺伝子を持っていると確実に予防することは難しいです。
特に発症してしまうと完治できないものが多いのも特徴です。
ですが、そういった病気の中には、遺伝子検査を行うことでリスクを避けることができるものもあるので、こういった病気が心配な方は、ソマリを飼う前に獣医さんに相談してみると良いかもしれません。
日頃から常に、いつもと変わった様子がないか注意してあげ、早期発見してあげる事が大切です。