どうして猫は毛玉を吐くのか?
猫が野生で過ごしていた頃、獲物を食べた後、不要な異物を吐き出していたので、その時の習性が残っているとも言われています。
また猫は自分の体を舐めて毛づくろいをし、体を清潔に保とうとします。
猫の皮膚にはアポクリン汗腺があり、油分を含んだ分泌物が出て毛を絡める要因となっています。
その絡まった毛を舐めることで、胃に蓄積されていき、溜まった毛玉を「カッカッ」と吐き出しているのです。
初めは驚く方も多いと思いますが、毛玉を吐き出すのは病気ではないので心配はありません。
落ち着くまで見守り、処理してあげましょう。
毛玉を吐く時期
毛玉を吐く頻度は月に平均で2〜3回とも言われています。
猫には季節によって毛が抜け替わる「換毛期」というものがあります。
春になると柔らかい冬毛から硬い夏毛へ、そして秋になると夏毛から冬毛へと換毛し、急な気温変化から体を守っているのです。
一般的に、3月と11月が換毛期にあたると言われています。
換毛期の間はいつも以上に猫の毛が多く舞い散るので、飲み込む量も増えます。
それに伴い、毛玉を吐き出す頻度も多くなります。
しかし、完全室内飼いで外の光を浴びていない猫は換毛期の区分が無くなって一年中抜け替わりすることもあるそうです。
猫の毛の長さにも関係しており、短い短毛種の場合は胃の中で毛玉になる前に便として排出されることも多いです。
吐いた後のケア
病気ではなくても吐いてすぐの猫は疲れているので、しばらくはそっとしてあげましょう。
口の中が気持ち悪くなったり、喉が乾いたりしているので飲み水の用意が必要です。
また、猫が吐いているときは、猫の背中をさすらないようにしましょう。
人間の場合は背中をさすってもらえると気分が良くなりますが、猫の場合は誤嚥の原因になり危険です。
吐いてすぐに食欲があるのは良いことですが、嘔吐物を食べようとする場合は止めてあげてください。
胃酸が混じっていたり、寄生虫がいる場合もあります。
嘔吐物を見つけたらすぐに処理してあげましょう。
対策
毛玉を吐く頻度が多い場合は、予防が必要です。
どんな方法があるのか紹介していきたいと思います。
ブラッシング
短毛種の猫にはスリッカー、長毛種の猫にはコームを使うとブラッシングがやりやすいです。
まずはマッサージで猫をリラックスさせてあげると良いでしょう。
顔の周辺をゆっくりと撫でながら揉んであげると、徐々に猫の目が細く気持ち良さそうな顔になってきます。
猫がリラックスしてきたら、タイミングを見てブラッシングを始めましょう。
猫の体を撫でながらゆっくりとブラッシングしてあげます。
「いい子だね」や「偉いね」と優しく声を掛けてあげると、ブラッシングから気をそらすことが出来ます。
猫が安心した状態を保ちながらしてあげましょう。
顎や喉、シッポの付け根付近は猫が気持ちよく感じる場所なので、そこを中心にブラッシングを進めてあげます。
猫によっては嫌がる場合もあるので、飼い猫の好きな場所を探してあげてください。
ブラッシング中は飼い主さんの腕や体をくっつけてあげると猫が安心して受けることが出来ます。
耳や尻尾を動かしたり、飼い主さんの手やブラシを見ている時は猫が嫌がっている合図です。
嫌いになる前に中断してあげましょう。
シャンプー
シャンプーをする前には必ず丁寧にブラッシングをしましょう。
特に長毛種は、毛がからまった状態で水に濡らすとほぐれなくなるので、しっかりとブラッシングをしてあげましょう。
猫は水が嫌いな子が多いです。
顔が濡れることを特に嫌がるので、顔にはかからないようにしましょう。
目や耳に入らないように注意が必要です。
体を濡らす時は、足やお尻など顔から遠いところから徐々に慣らしてあげます。
ぬるま湯でシャンプーしてあげると良いです。
シャンプーに慣れてもらういは子猫の時から習慣づけてあげるのが一番良いです。
洗ってる時は穏やかな声で猫をリラックスさせてあげましょう。
カット
指やブラッシングでもほぐせないような毛玉がある時は、カットしてあげましょう。
慣れていない場合はプロにトリミングしてもらうと安心です。
気になるお値段ですが、お店やコースによって変動はありますが、短毛種は平均で5000円〜7000円、長毛種は平均で6000円〜8000円程となっています。
ペットショップで頼んだ方が安くて、動物病院で頼んだ方がやや高めの傾向にあるようです。
皮膚病の早期発見にも繋がるのでオススメです。
自宅で行う場合は手順を把握して行いましょう。
・カットする毛玉の根元をおさえて、毛玉の上からハサミを立てて十字に切れ込みを入れます。
猫の皮膚を傷つけないように上の部分をカットしましょう。
・毛玉を引っ張らないように少しずつ手でほぐして行きます。
・ほぐれない場合は毛玉を根元からカットします。
無理に引っ張ると猫が痛がったり、皮膚病の元にもなりかねないので気を付けて下さい。
嫌な思いが残ると、お手入れも嫌いになるので様子を見ながら行いましょう。
毛玉ケアのごはん
市販されているフードに毛玉ケア用のものがあります。
消化器官の働きを促して毛玉を便と一緒に排泄できるように食物繊維の量を調節して作られています。
ブラッシングやシャンプーが苦手な猫には、毛玉ケア用のフードを与えてあげると良いでしょう。
急にフードを変えると食べなくなる猫もいるので、一気に全部変えるのではなく今食べているフードに少量づつ混ぜて徐々に変えてあげるようにしましょう。
猫草を食べさせる
猫草を食べると毛玉の排出を促してくれる効果があります。
ペットショップなどに売られており、好んで食べる猫も多いです。
毛玉ケア用のフードが合わなかった場合は猫草を与えてあげるのも対策になります。
薬で毛玉を抑える
猫の体内で毛玉が作られるのを防止し、便と一緒に排出するように促してくれる毛玉除去剤やサプリメントもあります。
動物病院でも取り扱っているので、吐く頻度が多いのに、ブラッシングやフード、猫草などが苦手で対策が難しい場合はかかりつけの獣医さんに相談してみましょう。
毛球症
吐く回数が多かったり、便にも毛玉が混じっていない場合は毛球症にかかっている場合があります。
咳をして毛玉を吐こうとしても吐けない様子が見られたり、食欲不振や便秘になり、お腹を触られるのを嫌がるようになります。
当てはまる症状が見られた場合は、動物病院で診てもらいましょう。
普段からお手入れしてあげることで、毛球症の早期発見に繋がります。
また、猫はストレスが溜まると毛づくろいを頻繁に行う場合があります。
グルーミングが増えて毛玉の排出が追いつかなかったり、胃腸の働きが弱くなって毛玉を排出できなくなると毛球症
になってしまうので、注意しましょう。
「毛球症」以外に、口に違和感があった場合には吐こうとしても吐けない様子が見られます。
口に赤みや異臭があると、喉の炎症や口内炎、歯肉炎になっていることがあるので、口の中をしっかりと見てあげましょう。
毛玉以外で吐く場合
誤食
嘔吐で動物病院を受診した猫の4割は誤食が原因と言われています。
動いている物や獲物のようなものをみると、遊びだし、夢中になって飲み込んでしまったり、お腹が空いて落ちているものを食べてしまうことがあります。
特に多いのがおもちゃの一部やヒモです。
飲み込んだ物を全て吐き出せた場合は良いですが、残ってしまうと手術で取り出さなければいけなくなることもあるので危険です。
ヒモは胃腸内で絡まることもあるので、特に注意しましょう。
猫の口に入る小さなものは、猫の手に届かないように片付けておきましょう。
フードや胃液を吐く
大半は空腹が原因です。
胃に何もなくて胃液を吐いたり、急に沢山のフードを食べて胃がびっくりして吐いてしまいます。
猫は本来ご飯を少しずつ食べるので、少量ずつ与えたり、早食い防止の食器を使うなど工夫してあげましょう。
ストレスで吐く
原因は様々ですが、環境の変化や運動不足の場合が多いです。
猫のお気に入りの場所を作ってあげたり、一緒に遊んであげるとストレスの解消になります。
嘔吐物の色
嘔吐物の色によって、猫が何らかの病気に罹っているかが分かります。
注意して見てあげましょう。
黄色い液体
黄色い液体は胆汁です。
十二指腸に分泌される胆汁が胃まで逆流し、胃粘膜が刺激されて嘔吐が起こります。
空腹時にも胆汁を吐き、ご飯の調整で改善されることが多いですが、嘔吐が続く場合は要注意です。
胆汁嘔吐症候群の疑いがあるので、動物病院を受診しましょう。
透明な液体や白い泡
透明な液体は胃液であることが多く、白い泡が混じっている場合があります。
空腹が原因で吐くことが多く、嘔吐物が胃液のみで、吐いた後も元気がありご飯もいつも通りに食べるようなら心配しなくて大丈夫です。
繰り返し吐いたり、嘔吐物に血が混じるようになると胃炎や食道炎を起こしている場合があります。
ピンク〜赤い液体
ピンク色から少量の薄い赤色の場合は胃や食道、歯茎からの出血だと考えられます。
誤食や猫回虫症からの嘔吐でも血が混ざることがあるので、嘔吐物に異物や虫が混ざっていないか確認しましょう。
嘔吐を何度も繰り返して、胃ys食道の粘膜が傷付いて出血している場合もあります。
暗赤色・茶色の液体
胃や十二指腸で出血が起こると、暗赤色や茶色に沈殿物を含む液体を吐きます。
また、胃や十二指腸に出来た潰瘍が原因で嘔吐と同時に黒いタール状の便が出ます。
吐き終えた猫が落ち着いたら動物病院に行って診てもらいましょう。
緑色の液体
緑色の液体を吐く場合は2種類の原因があります。
一つは、植物を飲み込んでしまった場合。
外に出かける猫に多く見られますが、猫には有害になる植物があり、誤って食べてしまうと体が拒絶反応を起こし吐き出してしまいます。
直ぐに病院に連れて行かなくても大丈夫ですが、具合が悪化するようであれば連れて行きましょう。
猫に有害な植物は主にほうずき、ベゴニア、ヒアシンス、とうだい草、ポトスの5種類です。
猫を外に出す場合は、近くに咲いているか確認しておきましょう。
もう一つは、内臓機能の障害や炎症が原因の場合です。
肝臓、胃、膵臓、腎臓などの臓器が異常をきたしており、胆汁が濃くなって黄色から濃い緑がかった液体を吐いてしまいます。
その場合は、急性胃炎、急性胆管炎、急性膵炎、腫瘍、炎症、内部障害機能などの病気が疑われます。
他にも食欲不振や発熱などの症状が現れるので、直ぐに病院に連れて行きましょう。
血を吐く
心臓や肺に問題が起きた場合には、鮮血を吐きます。
飲み込んでしまう猫も多いため、飼い主が留守の場合は気づくのが遅いことがあります。
急を要する場合が多いので、直ぐに動物病院に連れて行きましょう。
猫が吐いて病院に連れて行く場合
異物が混ざっていれば、吐いた物を持って動物病院に連れて行きましょう。
液体のみの場合は写真を持って行くと原因が分かりやすくなります。
嘔吐前後の様子や時間をメモに書いて持って行くと、落ち着いて説明することが出来るでしょう。
連れて行く際はなるべく揺れないよう慎重に運びましょう。
誤嚥に繋がるので危険です。
まとめ
猫が毛玉を吐くのは習性だとわかっていても心配してしまいますよね。
苦しむ姿も見たくないものなので、ブラッシングやフードでの対策をしてなるべく吐かずに済むようにしてあげたいですね!
毛玉以外を吐いた場合は焦らずに落ち着くまで様子を見てあげましょう。