バーマンの歴史
バーマンは、ミャンマー周辺原産と考えられていますが、猫種として成立した歴史的背景ははっきりとわかっていません。
9世紀から15世紀までのクメール王朝時代にバーマンに似た猫がいたとの記録が残っています。
1916年にはバーマンが初めて欧米に入ってきて、1匹のオスのバーマンと1匹のメスのバーマンがフランスに輸入されました。
2匹のバーマンの入手経路については2つの有力な説があります。
1つは、カンボジアのクメール族の聖職者が、メジャー・ゴードン・ラッセルとオーガスト・パヴィという2人のイギリス人に対して、2匹のバーマンを贈呈したという説です。
そしてもう1つは、ラオスの寺院の使用人が、その寺院で神聖なるネコとして飼育されていた2匹の猫を、ヴァンダービルトというアメリカ人に対して贈呈したという説もあります。
フランスに運ばれた2匹のバーマンのうち、オスのバーマンは輸送中に死亡してしまいましたが、メスのバーマンは妊娠していたため、フランスで1匹のバーマンが生まれました。
フランスはバーマンの繁殖プログラムの基礎を構築し、1925年にはバーマンが猫種として承認されました。
しかし、第二次世界大戦によってバーマンは絶滅の縁に立たされます。
終戦時に生き残ったバーマンはわずか2匹でしたが、その後、異系交配を繰り返すことによって絶滅の危機を逃れる事ができました。
1965年には、イギリスの愛猫協会で正式にネコの種類として承認されました。
そして翌1966年にはアメリカの愛猫協会でも承認されました。
バーマンの特徴
バーマンの最大の特徴は、手の方がミトンまたはグローブ、足の方がレースと呼ばれる、白い手袋と靴下を履いたような四肢の先です。
また、丸い顔にローマンシェイプと呼ばれる個性的な鼻、三角の耳に、美しく澄んだ青い目をしています。
体毛はシルキーなシングルコートで、ダブルコートのペルシャなどよりも短く、毛玉も出来にくい毛質です。
うさぎのようにさらさらとした毛は触り心地も良いです。
バーマンの背中には「ゴールデンミスト」呼ばれる金色の毛が生えていて、耳や顔・足・尾などにこげ茶色や淡い灰色のポイントを持っているのも特徴的です。
バーマンの性格
バーマンは、とでも穏やかな性格をしており、攻撃的な面もほとんどないと言えるでしょう。
愛情深く、飼い主さんやほかの猫とも信頼関係を築きやすい猫で、少し甘えん坊な面もあります。
ほかの猫や犬とも上手に接する事ができ、辛抱強い面もあるので、人間の子どもとの付き合い方もうまいので、家族みんなと仲良くできる猫と言えます。
気に入った相手には家の中で付きまとうほどの愛情を示す事もあり、大好きな人の気を引くために、色々な雑用のお手伝いをしようとすること事もあるようですよ。
そこも、バーマンのかわいらしい一面と言えるでしょう。
バーマンの寿命
バーマンの平均寿命は、13歳~15歳前後と言われています。
大体一般的な猫の平均寿命が15歳なので、ほぼ平均的と言えるでしょう。
生活管理をしっかりと行ってあげる事が、平均以上に長生きしてもらうコツです。
バーマンの体重
バーマンの平均体重は、オスで4.2kg~7.0kg、メスで3.0kg~4.5kg程です。
中型よりやや大きく、ロング&サブスタンシャルタイプに分類されます。
がっしりとした体つきなので大きく見えますが、やや大きめの中型~大型の間くらいのサイズです。
バーマンの値段
バーマンの平均的な値段は、ペットショップで購入する場合で15~25万円、ブリーダーさんからの購入の場合で10~25万円前後です。
高い場合には30万円を超えてくる場合もあります。
しかし、ペットショップで販売されている事まずなく、バーマンを取り扱っているブリーダーさん自体も少ないので、入手先を見つけるのが難しいでしょう。
バーマンの飼い方
バーマンは子猫時代、比較的活発に動き回りますが、大人になってくると落ち着き、どちらかというと「のんびり」と過ごすようになります。
しかし、全く運動をしなければ肥満になってしまうので、体は少し大きめな猫なので、運動量をしっかり調節してあげる必要があります。
なので、運動できるスペースや遊具を用意してあげましょう。
人間との触れ合いが大好きな猫なので、沢山一緒に遊んであげると喜びます。
バーマンは大きい体格なので、食事管理しっかりしてあげないと肥満気味になってしまいます。
大きな体を維持するためには高いカロリーも必要ですが、運動量と食事量のバランスが大切です。
また、ふさふさの長毛をツヤ良くキープするには、被毛のお手入れが必須となります。
長毛種ですがサラサラしている毛質のため、絡まることはないのですが、毎日のブラッシングが理想的です。
もし毎日のブラッシングが難しいようであれば、1週間に数回程度は、必ずブラッシングをしてあげるようにしましょう。
バーマンのかかりやすい病気
バーマンがかかりやすい病気を原因や遺伝性も含めてご紹介します。
是非これからバーマンを飼う方、バーマンを飼っている方は注意してあげましょう。
- 猫伝染性腹膜炎(FIP)
- 難産
- ウールサッキング
- 貧毛症と胸腺低形成
- 新生子溶血
猫伝染性腹膜炎(FIP)
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫腸コロナウイルスが突然変異を起こして強い病原性を獲得し、腹膜炎を特徴とする激しい症状を引き起こす病気です。
致死性の高い病気で、このウイルスを事前に見分ける有効な方法はまだ分かっていません。
一回発症すると効果的な治療法がない為、抗生物質を投与して二次感染を防いだり、免疫力を高める為にネコインターフェロンを投与、炎症を抑えるための抗炎症薬の投与などを行う、対処療法を行い様子を見ます。
雑種で0.35%、純血種で1.3%と純血種の方が発症リスクが高くなっており、バーマンの発症頻度は22.2%(4分の18ほど)で、雑種よりも82倍発症しやすいという研究結果が出ています。
特定の品種でかかりやすい傾向があるものの、原因は特定できていません。
難産
難産は、出産のときに胎子をスムーズに体外に分娩することができない状態のことを指します。
胎子が大きすぎて母猫の産道を通過できない場合は、帝王切開が行われる場合があります。
スウェーデン農科学大学の調査チームが、品種ごとの発生率を調査したところ、猫全体における発生率は1万頭につき22件(0.22%)でした。
さらに、純血種では67件(0.67%)、雑種では7件(0.07%)という結果になりました。
この発生率を品種ごとに調べてみると、バーマンでは標準の1.7倍も難産に陥りやすいことが明らかになっています。
バーマンの出産時にはくれぐれも注意してあげたいところです。
ウールサッキング
ウールサッキングは、明確な理由もなく、羊毛などの栄養成分を持たないものに吸い付く異常行動のことです。
別名「異食症」(pica)とも呼ばれている病気です。
2015年、アメリカ・マサチューセッツ州にある複数の大学で、ウールサッキングを発症したシャム(患猫50+健常猫52頭)とバーマン(患猫52頭+健常猫50頭)合計204頭を対象とした比較調査が行われました。
猫たちの来歴や、生活環境と発症との関係性を統計的に検証していった所、発症したバーマンでは平均離乳時期が8.9週齢だったのに対し、健常グループでは12.6週齢という大きな開きが見られました。
また離乳時期を7週齢で区切った所、7週齢以前で離乳した場合の発症率が35.7%だったのに対し、7週齢以降では11.8%という結果になりました。
さらに同腹仔の数を「3頭」で区切った所、きょうだい猫の数が3頭以下の発症率が55.9%だったのに対し、3頭超の場合は30.6%となりました。
なので調査チームは、早期離乳ときょうだい猫の少なさが、バーマンにおけるウールサッキングの発症リスクを高めているのではないかと考えています。
貧毛症と胸腺低形成
貧毛症は、被毛が正常に発育せず、地肌が透けて見えるほど極端に少ない状態が続く病気です。
また、胸腺低形成は、胸の中央にある胸腺と呼ばれる器官が正常に形成されず、免疫力が極端に低下してしまう病気の事です。
2つの疾患を合わせて「nude/SCID症候群」と呼ぶことがあります。
1980年代に、フランスとイギリス両国で生まれつき被毛を持たないバーマンの子猫13頭が、子猫の特徴として極端に被毛が少ないことや、他のきょうだい猫に比べて寿命が短い(8ヶ月齢)ことが報告されました。
その後スイスでも同様の報告が行われたたため研究が行われると、死後解剖の結果胸腺の欠損と脾臓におけるリンパ球の欠損が判明しました。
さらに、2013年にフランスの調査チームが「nude/SCID症候群」を発症したバーマンを対象とした遺伝子調査を行った所、患猫では「FOXN1」と呼ばれる遺伝子に欠失変異があることが確認されました。
この遺伝子は、被毛の成長と胸腺上皮の機能維持の両方に関わっているため、遺伝子に異常が生じてタンパク質が形成されなくなると、「貧毛症」および「胸腺無形成」が引き起こされる事が判明しています。
遺伝形式は両親から1本ずつ変異遺伝子を受け継いで初めて発症する常染色体劣性遺伝で、フランス国内における未発症キャリア(変異遺伝子を1本だけ保有している状態)の割合は3.2%と推計されています。
猫は遺伝子検査も可能なので、繁殖の際は事前に検査を行い、キャリア同士の交配を避けるようにしましょう。
新生子溶血
新生子溶血は、B型の母猫がA型の子猫に対して初乳を与えたとき、拒絶反応が起こって赤血球が破壊されてしまう現象のことです。
最悪のケースでは死亡する事があります。
1990年台後半にイギリスで行われた調査では、24頭のバーマンのうちB型が7頭(29.2%)という高い割合で生まれました。
もし母猫がB型で、生まれてきた子猫がA型という不釣り合いが起こった場合、子猫の赤血球と母乳由来の血漿成分が拒絶反応を起こし、新生子溶血を引き起こしてしまう危険性が高くなります。
子猫のしっぽが壊死を起こしたという報告もあるので、繁殖の際は事前に猫の血液型を調べ、「B型の母猫を繁殖に使わない事や、B型の父猫とだけ繁殖させるなどの配慮が必須です。